野に下がる、は‘やに下る’と読む。
下野(げや)する、と同じ意味だ。
野を‘や’と読むのは、野という文字がもともとは朝廷に対する民間の事を指していたからである。
したがって、野に下るということは、官職に就いていたものが退いて民間生活にはいることになる。
今まで振るっていた権限もなくなり、ぬくぬくと暮らしていた組織の中から、生活するのも大変な野原に放り出されたイメージだろう。
したがって、権限があまりない下っ端公務員には使われないようだ。
‘野’という字を使うからには、民間には関係のない言葉である。
虎を千里の野に放つ、ということわざもある。
こちらの’野’は‘の’である。
野原のことだ。
猛虎を野に放って自由にするという意味から、猛威を振るう能力のあるものを、その力が存分に発揮できる状態におくことである。
また、後にわざわいを残すような危険なものを野放しにしておくことのたとえにも使われる。
同じ’野’を使う言葉で、「外野がうるさい」とか、「外野席は黙ってろ」という‘外野’という言葉もよく聞かれる。
こちらは、単純に野球から来た言葉である。
野球の’外野’を比喩的に「直接関係ない第三者」を指す意味で使っている。
外野手が、試合に関係ない人間とは思えないので、なぜこのような言葉が使われるようになったのか、不思議だ。
’野’という文字は、使い方次第で様々な姿を見せてくれる。