大変だよと些事あおり立てワイドショー

川柳徒然草
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テレビのワイドショーは、日常の些事を大げさに煽り立てて、視聴者の関心を集めようとする。この光景は、まさに江戸時代の「瓦版売り」が「大変だよ、大変だよ」と叫んでいた姿と重なる。
もともとマスコミ産業は、何か変事が発生した時にその詳しい情報を知らせることで成り立っている。変事が「大変なこと」と認識されなければ、その情報は売れない。したがって、大事件が起きたと騒ぎ立て、情報を買ってもらうことで経営を成り立たせるのだ。江戸時代の瓦版売りが「大変だよ、大変だよ」と叫んで瓦版を売っていたのは、まさにこの原理に基づいている。

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現代のテレビ局もまた、視聴率を稼ぐために「大変だよ」と煽り立て、些細な出来事を「大事件」に仕立て上げる。視聴率はテレビ局にとっての生命線であり、その数字を上げるために、些細な出来事でも「ニュースバリュー」を見出し、大々的に報じることが常套手段となっている。
スタッフは毎日のニュースやネット上の話題をチェックし、その中から「今、視聴者が関心を持ちそうなもの」を選び出す。そして、それをどのように演出すれば視聴者の興味を引きつけるかを徹底的に検討する。この過程で、時には事実を過度に強調したり、極端な表現を用いたりすることもある。番組の冒頭で流れる「緊急速報」や「衝撃の事実」といったテロップは、その代表例である。
視聴者を引きつけるために、あえて大げさに演出することでインパクトを持たせるのが狙いである。さらに、番組内での討論や専門家のコメントも、視聴者の感情を揺さぶるように編集されることもある。番組が提供する情報は一見「重要な問題」のように見えるが、その実、多くは日常的な出来事を過剰に報じたものに過ぎないことが多い。
テレビ局は些事を「大変だ」と大げさに報じることがビジネスとして必要となる。これにより、視聴者は日々の生活で感じる些細な不安を「大きな問題」として認識させられる。結果として、視聴者は不安を感じるたびにワイドショーに依存し、さらに煽られる。このサイクルが続く限り、テレビ局は視聴率を稼ぎ続け、視聴者は些事を大げさに感じ続けるのである。


しかし、問題は煽る側のテレビ局だけにあるのだろうか? 視聴者もまた、その煽りに乗りやすい性質を持っている。視聴者は、ワイドショーが提供する「大変だ」という情報に引き込まれ、日常の平穏さを忘れてしまう。テレビ局が煽ることに成功するのは、視聴者がその煽りを受け入れているからである。
当然、視聴者もこの仕掛けに敏感であるべきだ。番組制作の裏側には、視聴率を稼ぐための戦略が隠されていることを理解し、情報を受け取る際には冷静な判断が求められる。テレビ局が視聴者の興味を引くために情報を操作することは避けられないが、その操作に流されないためには、視聴者自身が一歩引いて状況を見つめる力を持つ必要がある。
視聴者は情報を冷静に受け止める力を持つことである。「大変だよ」と言われても、それが本当に大変なことなのか、自分自身で判断する冷静さが求められる。テレビ局が煽るのを止めることは難しいが、視聴者が煽りに乗らないようにすることはできるはずだ。
「大変だよ」という煽りに踊らされることなく、自らの視点で何が本当に重要かを見極めることが、現代の情報社会において不可欠である。

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