昔は、週に一二回は会っていた飲み仲間とも、月に一二度になり、年に一二度になり、最近はメールと年賀状の交換だけになってしまっていた。
突然の訃報が届き、通夜の席に駆け付けた。
現役を引退して永年経つと、葬儀も家族親族だけの集まりになってしまう。
変な格式ばったところが無くて、簡素な葬儀会場だった。
昔の悪友が何人か来ていた。
家族は、特に親しい友人だけに知らせたそうである。
悪友と呼ばれる友達は、大切な友達だと家族からも認識されていたことが嬉しかった。
早々に通夜の席を退散し、せっかくの機会だからと、悪友連中と近くの酒場に寄って偲ぶ会をやることになった。
通夜だから、堅苦しい服装はしてないので、そのまま入っても違和感はなかった。
多少線香の匂いはしているかもしれないが、時間が経てば消えるだろう。
最初は、故人の冥福を祈って乾杯をした。
次に、皆の健康を祈って乾杯をした。
故人の思い出話から、それぞれの近況報告になり、そのうち昔のように盛り上がって、話は四方八方に膨らみ始める。
しんみりした雰囲気は全くなくなり、昔どおりの飲み仲間の集まりになってくる。
いつの間にか、周りの客もいなくなり名残惜しいが宴を終えることにする。
故人が、悪友再会の機会を作ってくれたようだ。
しかし、久しぶりに会えるのが、このような場となることはさみしさも感じる。