足るを知ると言いたいけれどまだ足りぬ

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老子に「足るを知る者は富み、強(つと)めて行なう者は志有り」という言葉がある。

満足する事を知っている人間が本当に豊かな人間であり、不断の努力ができる人は志を持っている人である、という意味である。

自分が何を持っているのかを知り、それに満足することこそ真の豊かさであり、そのうえで絶えず努力を続ける人は、それだけで既に生きる目的を果たしている、ということだろう。

しかし、高度成長期を乗り越えてきた世代の人間にとって、自分の現状に満足しろと言われても、簡単には受け入れ難いものがある。

もちろん理想や夢を持つことは大切だが、無いものねだりや執着に縛られ、自らを苦しめている面もある。

理想を追い求めると、無いものに目が移り、あれが足りない、これが欲しいとなってしまう。

しかし、無いものねだりをしていたらきりがない。

老子の‘足るを知る’の言葉の前には、「人を知る者は智、自ら知る者は明(めい)なり。人に勝つ者は力有り、自ら勝つ者は強し」とある。

他人を理解するには知恵が必要であるが、自分自身を理解するにはもっとレベルの高い知恵のはたらきが必要である、ということだ。

そして、人に勝つことができる人は力をもち、自分に勝つことができる人は真の強さを持つ、といっている。

自分を知ることは難しく、自分に克つことはさらに難しい。