ぽっくり願望が強くなったのは、昭和47年、有吉佐和子が「恍惚の人」で認知症の高齢者を描いて以来である。
当時日本の平均寿命は男性が69歳、女性が74歳。高齢者化率はわずか約7%だった。
それから約50年たって、2019年の日本人の平均寿命は、女性が87.45歳、男性が81.41歳 高齢化率28.1%である。
厚生労働省の資料によると、介護を受けたり、寝たきりになったりせずに生活できる’健康寿命’は、2016年は男性72.14歳、女性74.79歳だった。
平均寿命と健康寿命の差は、介護が必要なケースにつながることを意味している。
今後、どれだけ健康寿命を平均寿命に近づけるかが、社会の大きな課題となる。
’老衰死’とは、高齢者が特別な病気や怪我でなく、徐々に衰えて自然に力尽きることである。
年齢別死亡原因で老衰の割合は、100歳以上が26.3%、95-99歳15.4%、90-94歳8.7%、85-89歳4.8%となっている。
2000年代に入り、老衰死の比率が上昇している。
18年は第1位のがん、第2位の心疾患に続いて死亡原因の第3位に浮上した。
長生きの人ほど、老衰という穏やかな最期を迎えているようだ。
平均寿命が伸び続けている時代だから、死のあり方について考えることが多くなる。
窮屈な自己規制をしなくて、悠々と長生きしたい。
そして、健康的に年齢を重ね、誰にも迷惑をかけず苦しまないで、静かに死んでいきたい。
ぽっくり寺に頼らなくてこの世をおさらばできたら、素晴らしいことだと思っている。