胸のうち見透かすような仁王の目

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仁王像と言えば、東大寺南大門の金剛力士像を思い出す。

運慶と快慶が造った2体の仁王像は、門の真ん中に立つと、どちらの仁王像からも睨まれているように配置されている。

’仁王’は二体で一対ということから、二王(仁王)と呼ばれる。

神聖な武器・金剛杵を持ち、邪悪なもの侵入を防ぐ仏教の守護神である。

通常仁王は寺を守るために、南側に向かってにらみを効かすように立っている。

東大寺の仁王像二体は、昭和63年から5年間にわたって全面解体修理が行われ、天平創建期から向かい会って立っていたことが明らかになった。

東大寺南大門の金剛力士像は、阿形像が2987個、吽形像が3115個のパーツで作られている。

顔は110のパーツで組み立てられており、設計図は無い。

これを、寄木造という手法で、複数の工人によって分業し、組み立てて一体の仏像を作り上げる。

この工法によって、巨大な仏像を短期間に作るのが可能になり、また像の耐久性もあがった。

明治時代に修復されたであろう目の部分は、顔の大きさや形にそぐわない小さな黒目で、焦点もきちんと合ってなかった。

今回の修復で、顔に見合った大きさの黒目にして、焦点もきちんと合わせている。

したがって、門から少し入ったところで阿形像と吽形像の視線が、来訪者をにらむように見える。

運慶・快慶は、悪霊を追い払うため、門を通る者に鋭い視線が向かうよう計算し尽くしていた。