完璧を少し崩して匠技

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「完璧」とは、完全で、欠けている点がまったくないことを意味している。

「璧」は、平らで中央に孔のあいた宝玉のことであり、完璧はキズのない玉のことである。

「未完の美」と言う言葉がある。

物は完成した瞬間から崩壊のプロセスが始まる、そこであえて未完成で置いておく、という考え方である。

したがって、‘完成しなければよい’と考え、未完の部分を残すということが行われる。

『徒然草』第82段には「すべて、何も皆、事のととのほりたるは悪しきことなり。し残したるを、さてうち置きたるは、おもしろく、生き延ぶるわざなり」と書いている。

「何事においても完璧はよくなくて、やり残しがあった方が味わい深い」という意味だ。

岡倉天心は『茶の本』の1段落目で「茶道の本質は不完全なものへの崇拝で、人生という度し難いものの中で、何か可能なものを成し遂げようとする繊細な試みだ」と述べている。

わが国の場合、わびさびに妙を見出す国民性とも相まって、この思想を反映しているケースが随所にみられる。

日光東照宮の陽明門では、柱12本の内の1本だけを逆さにして魔除けとしている。

浄土宗の総本山である京都の知恩院は、屋根の大棟中央部に瓦が2枚重なっていて、まるで置き忘れたような瓦が4枚ある。

建立当時、あえて残したと言われるこの瓦は「葺き残しの瓦」と呼ばれている。

完璧の手前で仕事を終え、あえて未完の美を求める、匠の技だ。