男は背中でモノを言う、という言葉がある。
昭和期の文芸評論家であり、日本藝術院会員だった亀井勝一郎は「人は後姿について全く無意識だ。
そして何げなくそこに全自己をあらわすものだ。後姿は悲しいものだ」という言葉を残している。
私たちは、必ず何か目的があって、気持ちが湧き、思考し、行動している。
その行動の90%以上は、無意識に行われている。
‘顕在意識’で見たこと、聞いたこと、知ったこと、感じたことは、すべて‘潜在意識’に蓄積されている。
‘無意識’は、その貯蔵場所から情報を受け取っている。
普段は顕在意識が優勢に働いているため、自分で潜在能力を自在にコントロールすることは困難である。
しかし、背中には意識が行き届かない。したがって、つい本音の部分が顔を出す。
人間のコミュニケーションには、「言語的コミュニケーション」と「非言語的コミュニケーション」がある。
言語と非言語とで、相異なるメッセージが発せられたとき、相手は非言語的メッセージを優先して受け取る傾向がつよい。
したがって、後ろ姿から発信されたメッセージは、本音ととらえられる。
潜在意識に貯められた情報が判断していることを、顕在意識でコントロールしようとしても無理だろう。
本音を隠して、建てまえで生きていこうとしても、むつかしいということだ。