エッシャーは、だまし絵で有名である。
上から下へ落ちていたはずの滝が,いつの間にか下から上に流れているという『滝』や、いつまでたっても元の場所に出てくる回廊などを見ていると、時間と空間が混乱してしまう。
エッシャーの絵は、無限性や迷宮性など、現実的にはありえない建築構造や空間構造表現がされている。
エッシャーの芸術は、空想と幾何学を融合させ、図形を反転または回転させて増殖させる’平面の正則分割’という理論が根本にある。
彼は‘永遠’や‘無限’というテーマを持ち続け、’無限に続く循環’を表現しようとしていた。
ヒトの‘目’は騙されやすくできている。
ヒトは網膜で受けた光を脳で処理することによって、何かを’見ている’と認識する。
しかも、脳は過去の経験や先入観に影響されやすい。
現実にはありえない不合理なものであっても、たとえば遠近法などによって合理的に描かれた絵には,現実の風景としての理解してしまう。
だまし絵は、そのようなヒトの脳が「本当はその形ではないのにそう見えてしまう意外性」をついた作品である。
エッシャーのだまし絵は、私たちがいかに先入観でものを見ているか、ということを如実に示している。
何事につけ、多角的な視点を多く持つことの大切さを、訴えかけているようだ。