旅の楽しみの一つは、食べ物だ。
せっかく普段とは違う土地に来たのだから、そこなりのおいしいものや珍しいものを食べたい。
大きなホテルや旅館に宿泊すると、大都会でもリゾート地でも、出てくるものは同じようなものだ。
山の中の温泉地で、マグロやタイの刺身をつまみながら一杯と言っても、情緒は薄れる。
その点、民宿には楽しみが多い。
豪華さとか、細やかなおもてなしなどには期待できないが、それらを補って余りある魅力にあふれている。
ただし、結構当たりはずれがあることは覚悟しておかなければなるまい。
民宿というのは、法的には「簡易宿所営業」として許可を得ており、カプセルホテルやペンションと同じ扱いである。
客室の延べ床面積が33平方メートル以上という決まり以外は、あまり細かい決まりはない。
個人経営や家族経営が多く、小規模な施設が大半である。
したがって、ホテルや旅館などでは味わえない、伝統的な郷土料理やその土地でとれた旬の食材による家庭的な料理を味わえる。
食事は、宿泊客全員がいろり端などで食べることが多く、さまざまな話題でにぎわう。
宿の大将や女将さんなどが入ることも多いため、土地の話題も色々聞き出せる。
地酒を酌み交わし、郷土料理をいただきながら、土地の昔話などを聞いていると、テレビで時間つぶしをするよりよほど楽しい。