’欲’とは、何かを欲しいと思う心であり、生理的・本能的なレベルのものから、精神的・社会的な高次なものまで含まれる。
心の働きや行動を決定する際に重要な役割をもつと考えられている。
仏教では、欲そのものは人間に本能的に具わっているものとして、諸悪の根源とは捉えない。
欲を達成しようとするあまりに、欲に執着しすぎることが煩悩となる。
ブッダは、人の苦の原因を自らの煩悩ととらえているが、煩悩の原因である‘欲’は生きる力とされており、欲を持つこと自体は否定されていない。
したがって、煩悩をなくせとは言わず、煩悩をコントロールすることが大事だと言っている。
人間に苦をもたらすのは、外的要因ではなく、人間自身の心の内にある‘執着’という煩悩でありこれをなくせば苦はなくなる。
‘欲望⇒執着⇒煩悩’ をなくして現実を受け入れることで、‘苦の解消’ を図ることが仏教の基本の教義である。
’煩悩’は、自己中心の考え方からきた心理的なものである。
煩悩をなくすためには、現実に合わせた欲望を持つこと、もしくは欲望をなくして現実を受け入れることだろう。
ローマ時代のストア派を代表する奴隷出身の哲学者エピクテトスは、自分の裁量の範囲内にある物事にだけを、自分の欲望の対象を限定するよう説いている。
現実とあわない、過大な欲望を持つなということだろう。