弓曳き童子的を外して客沸かす

川柳徒然草
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「東芝」の創業者であり、福岡県久留米市出身田中久重は、江戸時代後期から明治にかけての発明家である。
彼は幼いころから機械いじりが好きで、‘からくり儀右衛門’と呼ばれ、のちに‘東洋のエジソン’とも呼ばれるようにもなった。

彼が作ったからくり人形の中でも、’弓曳き童子’は傑作のひとつとされている。
約二百年前に作られたこの人形は、童子が矢台に置かれた四本の矢を順に弓につがえ、的をめがけて矢を放つ、という高度な動作を繰り返す。
的に当たった時の顔が、得意げに見えて愛らしい。

ゼンマイを動力として、七枚のカムに連動した十数本の糸や梃子により、人形が巧妙で滑らかな動きをする。
しかし、思っているよりはシンプルな仕掛けである。


この‘弓曳き童子’は、用意されている4本の矢のうち1本だけ必ず射損じる。
射る矢すべてが必ず的中していては、観ている方が「そういう仕組みだから的中して当然だ」と、すぐに飽きる。
しかし、必ず当たる訳ではなければ、当たった時の喜びも大きい。‘弓曳き童子’が時々的を外すのは、からくり儀右衛門が客の反応を考えて、このように仕掛けをしたものと考えられていた。


しかし、これは後世、修復された時に矢も作り直されたのだが、1本だけ調整が上手くいかず、外れるようになってしまったためだった。
一本だけ外れるようになったことで、弓曳童子にユーモラスさが加わり、その魅力をかえって高めている。
まさに、怪我の功名である。

失敗は成功の基というが、こんな失敗ならそれを成功例としてもかまわないだろう。

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