だまされぬふりして親は騙される

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「おふくろはもったいないが騙しよい」という川柳がある。
どら息子から見ると、おふくろを騙すのはたやすいものだろう。
もっとも母親の方も、見え見えの嘘を見抜いているが、わずかな真実を見つけて、だまされてないふりをして騙される。

もともと、生物は日常的に嘘をつき、騙すという行為を行って生き延びてきた。
他者を‘騙す’というのは‘自己利益’を得るための道具であり、進化の証である。

米バージニア大学の心理学者ベラ・デパウロ博士は、うそをつくことが生活の一部であることを明らかにした。
博士の研究では、人は性別にかかわらず、10分以上続く社会的交流のケースで、約20%の事例でうそをついていることが分かった。
さらに1対1で交流するケースでは、1週間に約30%がうそをついていることも明らかにしている。
人間は嘘をつく生き物らしい。

京都大学の研究グループが、正直者と嘘つきの脳の仕組みの違いを解明した。
それによると、脳の「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる領域活動が高い人ほど、嘘をつく割合が高かった。
側坐核は、前脳に存在し、報酬、快感、嗜癖、恐怖などに重要な役割を果たすと考えられている。
脳レベルで、報酬への反応性が高い人ほど自己利益への欲求が強く、結果として嘘をついてしまうようだ。

側坐核の活動が高い人が、嘘をつかずに正直な振る舞いをすると、「背外側前頭前野」と呼ばれる領域の活動が高くなった。
背外側前頭前野は、理性的な判断や行動の制御に重要な領域である。
正直に振る舞うには、自己利益への反応が高い人ほど、前頭前野による強い制御が必要ということを示している。

「私は嘘をついたことがない」というのが最大の嘘である。