裏ばかり読んで表を読み忘れ

川柳徒然草
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交渉事では、様々な駆け引きが取られる。
交渉の場では、必ず’本音’と’建てまえ’がある。
通常、建てまえで話し合いを進めて、本音を上手くひっくるめて妥結する。
そのため、本音を知ろうとして、相手の裏を探ることになる。
うまく裏を探り、相手の本音を知れば、交渉事は有利に進む
したがって、裏を探ることは、交渉の有力な武器である。

世の中の出来事の多くも、表と裏がある。
裏は、どろどろとして結構面白いことが多い
そこで何か事が起こると、つい裏を見ようとする。
しかし、世間一般では表の見方が流通しているので、裏から見た意見を述べると、’変わり者’とみられてしまう。
やはり、表の見方もしっかり知っておかなければ、世間を上手く渡れないようだ。

眼光紙背に徹す」ということわざがある。
書物を読んで、字句を解釈するだけでなく、その深意までもつかみとることである。

文芸作品を読む場合に、 行間を読めとよく言われる。
日本語は省略が多い
とくに主語を省略することは日常的にみられる。
そのため、世界最短の文学と言われる俳句や川柳が成立する。
たった17音の中に主語述語をきちんと入れていけば、窮屈ですぐ限界が来るだろう。
表現を徹底的に省略して、あとは読み手の判断に任せるのだから、短形文学が成り立つ。
したがって、学校の文学鑑賞では、行間を読めと言うことが指導される

禅は’ 不立文字’ といわれる。
言葉にできない教えを悟るために、座禅などの方法がとられている。
悟りを開くためには、大量の経典を読み、厳しい修行を通して体得していく。
言葉にできないことを知るため、膨大な量の言葉を吸収し、そこに自分なりの意味を見つけ出し、悟りを開くのである。

『星の王子さま』のキツネは、「ものは心で見る。肝心なことは目では見えない」というセリフを吐いている。
サン・テグジュベリも、同じようなことを考えていたのだろう。

しかし、ビジネス等の伝達型文章では、伝えることに正確性が求められる
読み手は、書き手の真意を正しく理解しなければならない。
そこに書かれている文章を, 正確に理解することである。
’伝達型文章’を読むときは、勝手に行間を読まないことだ。

表をしっかり読んで、裏を読まなければ、本当の意味は分からないのかもしれない。