また一歩冥土近づく誕生日

川柳徒然草
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歳を重ねるごとに、誕生日を迎えるのが億劫になってくる。かつてはプレゼントやケーキ、そして家族との祝宴に心躍らせていた頃とは、明らかに違う心境だ。まるで、冥土への一里塚を刻むかのような、どこか寂寥感漂う感慨を抱かずにはいられない。

「門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」は、一休禅師の狂歌である。『狂雲集(きょううんしゅう)』という歌集に出ている。昔は、年齢を数え年で数えていたため、正月がくれば一つ年を重ねた。新年という新たな旅立ちの象徴である門松も、同時に冥土への一歩を踏み出したことを意味する。歳を重ねるごとに、人生という旅の終わりが近づいていくことを実感せざるを得ない。一休さんは、正月の飾り物である門松を一里塚に見立て、人生を旅に例えて、歳をとるとは死が近づくことであると、正月に頭蓋骨を持ち京都の街中を歩いた。

“門松は冥途の旅の一里塚 馬駕籠もなく泊まり屋もなし”という狂歌がある。冥土への道は険しく、助け舟も休憩場所もない。誰が付き添うわけでもなく、一人旅であるということだ。厳しい現実に直面させられるような歌だ。

「冥土の道には王なし」という言葉もある。死者が行くあの世では王も庶民もなく、すべての人が平等だということを意味している。したがって王であっても庶民であっても、人間は死から逃れられない運命にある。死の前では誰もが平等である。権力や財力も何の役にも立たない。人生の終わりを前に、人は自らの生き方と向き合い、真の価値を見出すことを迫られる。

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現代ではアンチエイジングという言葉が広く知られるようになり、老化を抑制するための研究が進んでいる。適度な運動やバランスの取れた食事、ストレス管理など、日常生活の中で取り入れられる対策は数多くある。これらを実践することで、年を取ることに対する不安を軽減し、より充実した日々を送ることができる。

アンチエイジングとは、文字通り「抗加齢」を意味する言葉で、実際の年齢に逆らうことはできないが、老化を未然に防ぐことを目指す。健康・医療の分野では、生活習慣の改善による長寿を目指し、美容の分野では肌の老化を遅らせることなどが取り組まれている。

科学技術の進歩は、人類にとって希望の光となるだろう。しかし、同時に、より長い人生をどのように生きるかという新たな課題も突きつけられる。単に寿命を延ばすだけでなく、質の高い充実した人生を送るためには、心身の健康維持はもちろんのこと、精神的な豊かさや社会とのつながりも重要になってくる。

誕生日は、喜びと哀しみが交錯する特別な日である。しかし、その日をどう捉え、どう生きるかは自分次第だ。それは過去を振り返り、未来を楽しむ機会である。冥土への一里塚ではなく、新たな旅立ちの場所として捉えることもできる。「また一歩冥土近づく」と感じる瞬間こそ、今を大切にし、これからの人生をより良くするためのスタートラインと捉えることができるだろう。

自分の人生を振り返り、これからどのように歩んでいくのかを考えるきっかけとなる誕生日。残された時間を大切に、悔いのない生き方を追求していくことが、真の誕生日祝いの形なのかもしれない。年齢にとらわれず、自由に生きられる可能性に目を向け、残された時間を大切に過ごしていきたい。


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