腹八分残りの二分は酒で埋め

川柳徒然草
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「腹八分目に医者いらず」と言われるが、腹八分目とは、食事を適度な量で食べることを指している。満腹感を我慢して、健康に留意するということだろう。しかし、せっかくの食事だから、おいしく、気兼ねなく頂きたい。

だが、実際に腹八分を守るのは容易ではない。食事の後に物足りなさを感じ、その空いたスペースを酒で埋めることは、多くの人が経験することだろう。余った二分をどうしても埋めたくなる。そして、「酒は百薬の長」という言葉を都合よく解釈して一杯を楽しむ
食後の一杯はリラックス効果をもたらし、一日の疲れを癒すひとときとなる。適量であれば、消化を助けたり、ストレスを軽減する効果も期待できる。

「腹八分」とは、中国の古典医学書『黄帝内経』に書かれている言葉が、由来とされている。わが国では、江戸時代の医師・貝原益軒の著書『養生訓』から、一般に知られるようになった。『養生訓』には、「珍美の食に対するとも八九分にして止むべし」と記されている。美味いものに出会っても、八分目九分目で止めておきなさい、ということだ。
この言葉は、単に食べる量を制限すること以上の意味を持っている。それは、食べるものを厳選し、自分の体に必要な栄養素だけを摂取することを強調しているのだ。つまり、「腹八分」とは、単なる量の制限ではなく、質の高い食事を適量摂取することが重要であるという教えである。


ところが、「腹八分」を守るには、一つ大問題がある。腹八分に抑えるためには、自分がどのくらい食べたかや何を食べたかを、自分で管理しなければならない。腹八分とは、満腹を10としたときの8程度の状態である。しかし、この感覚は人それぞれ異なる。また、胃の中に食べ物が詰まった状態になってから、脳が満腹だと認識するまでに、時間差もある。しかも、腹にすき間がある状態で、’満腹感’を持てと言われても、なかなか納得できない。

貝原益軒は、酒についても『養生訓』で言及している。「酒は天の美禄(よいさずかりもの)であり、少し飲めば役にたつ」と述べ、適量の酒は体に良い影響を与えるとしているのだ。

近年、適量のアルコール摂取が健康に良いという研究結果が発表されている。例えば、適度な飲酒は、心臓病や脳卒中などの生活習慣病のリスクを下げたり、認知機能の低下を防いだりする効果があるとされている。

ところで、適量とはどれくらいだろうか? 厚生労働省によると、1日の推奨アルコール摂取量は、純アルコールで20g程度とされている。これは、ビールなら中ジョッキ2杯、日本酒なら1合、焼酎ならロック2杯程度に相当する。この程度で、残りの二分を埋め満腹感を得られるようになるとは思えない。そこで、「百薬の長」という言葉を信じて、残りの二分を酒でしっかり満たすことになる。

都合よく解釈すれば、貝原益軒が言いたかったことは、腹八分目の体を養うものを食べ、残りの二分に天の美禄である酒を‘適量’足すと良いと言っているようだ。まさに、わが意を得たりということで、食事は腹八分にとどめ、残りの二分は酒で埋めて満足している。「人生100年時代」に、長い残り人生を送るためには最高のアドバイスではないだろうか。


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