「蒔かぬ種は生えぬ」とは、原因がないのに結果が生じることはないという例えである。
‘因果応報’という言葉もある。よい行いをすればよい結果が生まれ、悪い行いをすれば悪い結果が返ってくるということである。
仏教では、結果も大切にするが、それ以上に原因のほうを重視する。
花が咲くのは種をまいたからだ、ということである。
‘公正世界仮説’いう言葉が、心理学にある。
人間の行いに対しては公正な結果が返ってくる、と考える認知バイアスであり、単純に言えば‘思い込み’である。
公正世界仮説を信じる者は、こんなことをすれば罰が当たるとか、正義は勝つ、あるいは努力すれば報われるとか、信じる者は救われるなどと考える。
未来に対して、ポジティブなイメージを持っている場合が多い。
しかし、一見何の罪もない人々が苦しむという不合理な現実に出会った場合、犠牲者本人に何らかの苦しむだけの理由があるのだ、という結論に達する非形式的誤謬をおこす。
そして、被害者や犠牲者の罪を非難する犠牲者非難をしがちである。
公正世界仮説という、思い込みをしっかり認識すると、世の中の理不尽さを軽減することができる。
ひいては、思い込む本人の精神的に安定を得ることができる。
何かしらの行動を起こさなければ目標を達成することはできない。
たとえ結果に結びつかなかったとしても、その努力は無駄だと思い込むのではなく、充分に意味のあることだと信じることである。