円空は江戸時代初期の僧であり、生涯に約12万体の仏像を彫っている。
中部地方から北海道にかけて、3メートルを超す大作から5センチほどのものまで、全国に約5300体が現存している。
円空仏は、デザインが簡素化されている。
しかも、ゴツゴツとした野性味に溢れながらも、柔らく口角が持ち上がった独特の微笑みをたたえている。
一刀彫という、鉈一本で仏像を彫り出す独特の彫りで知られている。
しかし、実際には多数の彫刻刀によって丹念に彫られているようだ。
30歳頃までの、円空の初期の仏像は古典的な造りをしており、丁寧に時間をかけて彫ったのだろうと思われる。
しかし、生涯12万体の仏像を彫ると志してから、次第に木の切断面、木の節や鑿(のみ)の跡がそのまま見える簡素な仏像が増えていった。
円空は、どんな木にも仏が宿っていると信じていた。
「是に廟ありすなわち世尊」すなわち、この世のすべてのものに仏が宿っているという意味の言葉を残している。
そのため、彫った際に出た木片も大切に扱った。
名古屋市の荒子観音寺は、円空作の3メートルを超える二体の仁王像が有名である。
円空が、二体の仁王像を彫った際に出た木片に、佛像の目・鼻・口をつける等の簡易な造形を加えて多くの小像を彫った。
「木っ端仏」と呼ばれている。
「円空仏の微笑は人々に生きる喜びを与える微笑である」と、哲学者・梅原猛 は語っている。