「人の口に戸は立てられぬ」と言うことわざがある。
一方で「世の取り沙汰は人に言わせよ」ということわざもある。
とにかく世間の人は、人のうわさをしたがるものだから、一々気にせずに、言いたい人には言いたいようにさせておく方がよい、という意味である。
イソップ物語に「王様の耳はロバの耳」がある。
元はギリシャ神話に出てくる古代アナトリア(現在のトルコ)にあったフリギア王国のミダス王の話しだ。
ふたりの神様、パンとアポロンが音楽の腕比べで、パンに軍配を挙げたミダス帝に怒ったアポロンが、「耳がよく聞こえないのだろう」と耳をびゅーんと伸ばしてロバの耳にしてしまった。
王様は、普段耳を隠していたが、調髪するときは床屋に隠せない。
「他人にこのことをもらしたら首をはねるぞ」と脅して調髪したが、床屋は黙っていることで体調を崩してしまう。
そこで古井戸に向かって「王様の耳はロバの耳」と叫ぶと、その声が町中に響き渡り、みんなが知ってしまった。
王様は「この大きな耳はみんなの意見をよく聞くためにある」といって、床屋を許す。
アポロンはそれを見て、王様の耳をもとに戻した。
人に対して寛大な心を持つという教訓、また真実を言う勇気が必要であるという教訓を説いている。
誰にも話してはいけない、誰にも話せないというストレスは、口に出すだけでスッキリ気持ちが晴れる。「表現による癒し」という。