ビジネスの世界にいたら、様々な駆け引きの場に行き当たる。
駆け引きは、戦場における作戦上の言葉で、「駆け」は馬に乗って駆けることから敵に向かって攻め進むこと、「引き」は馬の手綱を引くことから退却を意味した。
ビジネスの場における駆け引きとは、相手の出方や状況に応じて、自分に有利になるように事を運ぶことである。
イタリア・ルネッサンス期の外交官ニッコロ・マキャベリは『君主論』で、「国家には、宗教や道徳とは無関係に、獅子の勇猛さと狐のような狡智を兼ね備えた君主が必要」と説いた。
マキャベリは、君主が善良で敬虔、慈悲深い人間であることは称賛すべきであるとしつつも、現実の世界では理想のままにふるまうならば、そうした君主はかならず没落すると論じた。
したがって、国のリーダーはゴールが明確であるのならば、キレイ事で手段を選ばず、国家の利益を達成すべきであると説いている。
具体的に言えば、結果として国家の利益のためになるのであれば、どんな手段や非道徳的な行為であっても許される、ということだ。
「権謀術数」という四字熟語がある。
「権」は権力、「謀」は謀略、「術」は技法、「数」は計算を意味する。
状況の変化に応じた策略、謀りごとのことである。
初出は中国宋代の儒学者・朱子(朱熹)の『大学章句序』による。
その中で「権謀術数」は、‘見習うべきではない生き方’の例として挙げられている。