「馬の足」は、歌舞伎から出た言葉で、馬の脚を演じる役者の事である。
主に、下級の役者がつとめるところから、下級俳優やへたな役者のことをいう。
馬の足役は、張り子の馬を二人でかぶって、前足と後足になる。
前足の役者は‘心棒’というのを持って、首を支える。
後足の人は、ずっと中腰のままである。
張り子の馬は十五キロ程度あり、鎧兜を付けた武者役の役者が乗ると、重量は百五十キロくらいになる。
それだけの重さを肩で支え中腰のまま、時には十分間近く舞台の中央に立ったままになる。
しかも、首のところにあけた網をはった小さな窓から前を見るのだが、見える範囲はとても狭い。
このような条件で馬の足を演じるというのは、特殊技能なので、役者には‘飼葉料’という特別なお手当がつくらしい。
馬の脚役の役者が、芝居中に何らかの理由で姿を見せてしまうことから「馬脚をあらわす」ということわざが生まれた。
うっかり姿を現し、隠していた本性や悪事が明らかになる意味になり、一般化した。
したがって「馬脚を‘あらわす’」は、役者の姿が露わになることだから、漢字で書くときは「馬脚を‘露わす’」と書く。
下手な役者のことを’大根役者’という。
馬の足すなわち大根とか、大根の白さから‘しろうと(素人)’、食べても当たらないから興行も‘当たらない’、大根はすぐに‘おろされる’などもある。
「頭角を現す」とは、まるでちがう。