モナ・リザ は、不思議な表情を見せている。
能面に比定されることも多い。
能面は、’曖昧な表情’ や ‘非対称な作り’ が、演者の表現と結びつくことで多様な表情が浮かび上がってくる。
‘曖昧な表情’は、あらゆる’表情の元’を少しずつ含んでいるのではないかと想定されている。
左右が‘非対称な作り’になっており、目尻や口角の傾きなどを比較すれば、わずかな差があることが分かる。
この差によって、多様な表情が浮かび上がる。
能では、やや仰向けにすると高揚した様子(照ル)、少しうつむくと陰りのある様子 (曇ル) が表現される。
ほんの少しの角度の違いで、怒りや幸福感、いじらしさ、悲しみや恥じらい、絶望など様々な表情を感じさせている。
モナ・リザの魅惑的な微笑みも、能面に似た表情がみられる。
モナ・リザは、正面から口元を注意深く見つめると、決して笑っているようには見えない。
視点を口元からほかの部分へ移したり、全体を眺めたりするようにすると途端に微笑が浮かび上がる。
角度によって見え方が変わるあの微笑みが、偶然の産物か意図的なものなのかは、しばしば議論されてきた。
ドイツの脳科学者等が、モナ・リザの口角を微妙に調整した画像を作成して実験を行ったところ、被験者は97%の確率でダビンチの原画を‘喜びの表情’として受け止めた。
モナ・リザは、神秘的な美が表現されている。