寝た切り大国ニッポン/その現状と課題および取り組み

人生100年時代
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1.はじめに
「寝た切り大国ニッポン」の現状は深刻です。日本の高齢者が寝たきり状態になる割合は世界一であり、約300万人以上もの人々がその状態にあります。この問題は単に個人だけでなく、家族や社会全体にも深刻な影響を与えています。医療や介護にかかる経済的負担も増大し、寝たきり状態はQOL(生活の質)を低下させ、社会的孤立をもたらす可能性があります。将来的には寝たきりや介護が必要な高齢者が増え続けることで、社会保障財政のバランスが崩れると予測されています。政府や地域社会、個人の取り組みにより、この問題に対処する努力が行われています。健康寿命の延伸や医療・介護制度の改革など、さまざまな方策が講じられていますが、この問題の解決には個々の行動が不可欠です。今こそ、私たち一人ひとりが健康管理に努め、寝たきり大国からの脱却を目指すべきです。


2.「寝た切り大国ニッポン」の現状
日本の「寝たきり大国」の現状は深刻です。1989年の報告では、日本の老人の寝たきり率は、施設入所者でアメリカの約5倍、在宅居住者でイギリスの約3倍、デンマークの約6倍で、世界一でした。近年はこれらの調査がないのですが、日本の寝たきり老人の数はあまり減っていないので、いまでも日本は断トツの世界一だと言われています。

日本では寝たきり老人が、300万人以上いると推計されています。しかし、2020年の介護保険事業状況報告(厚生労働省)では、施設に入所している寝たきり老人だけでも、300万人以上います。さらに、自宅等で寝たきりになっている人を含めれば、その数はかなり増えるでしょう。

また、日本の平均寿命は伸びていますが、健康なまま年を取っていける人はそう多くありません。亡くなるまでの約10年間は、寝たきり生活や要介護状態になるケースも珍しくないのが日本の実情です。

これらの問題は、入院に対する考え方の違いが主な原因とされています。寝たきりの少ない諸外国では、基本的に入院期間はできるだけ短くして、早めに在宅医療に切り替えさせる仕組みになっています。しかし、日本では皆保険制度があって医療体制が充実しており、さらに入院中は病気や怪我をしているのだから「安静にすること」が当たり前のように考えられてきました。これは、ますます寝た切り高齢者を増やすことになります。
このような現状を踏まえ、私たちは高齢者の健康と生活の質の向上に向けた取り組みを強化する必要があります。


3.寝たきり大国ニッポンの課題
寝たきり状態が本人、家族、社会に与える影響
寝たきり状態は、本人だけでなく家族や社会全体にも大きな影響を及ぼします。本人にとっては、身体的な機能や能力が衰えるだけでなく、認知症の進行など精神的な後退が目立つようになります。家族にとっては、肉体的、精神的な負担が大きくなります。

経済的な負担
医療、介護など社会保障給付費は、2040年度に190兆円になるとの推計があります。特に介護は高齢者数の増加で2.4倍の約26兆円に膨らむと予想されています。

精神的な苦痛
寝たきり状態になると、QOL(生活の質)が低下し、社会的な孤立を引き起こすことがあります。これは、心の疲労が積もり、孤独感が増すことによります。

将来的な社会問題
寝たきりや介護が必要となる高齢者が増え続けることは、社会全体の問題となります。2025年には寝たきりや介護が必要となる高齢者が520万人に達するとされています。これは、社会保障財政のバランスを崩壊させる可能性があります。


4.「寝たきり大国ニッポン」からの脱却へ向けた取り組み
日本は高齢化社会を迎え、寝たきりの高齢者が増加しています。しかし、この問題を解決するための具体的な取り組みが進行中です。

・予防サービスと制度改革
予防サービスとして、健康寿命を延ばすための運動プログラムや栄養指導が提供されています。また、介護保険制度や医療制度の改革により、必要な医療・介護サービスが切れ目なく提供されるようになっています。

具体的な取り組みとその効果
具体的な取り組みとして、地域医療介護総合確保基金が設置され、地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針が定められています。これにより、地域の実情に応じた医療及び介護提供体制の確保が図られています。

・役割と責任
この問題解決には、政府、企業、個人それぞれが役割を果たす必要があります。政府は制度改革を推進し、企業は働きやすい環境を整備し、個人は自身の健康管理に努めることが求められます。

・具体的な行動の呼びかけ
寝たきり大国からの脱却に向けて、私たちは具体的な行動を起こすべきです。1日最低でも4000歩のウォーキングと、起立‐着席動作を約300回行うことが寝たきりを予防するために必要とされています。健康な未来のために、今日から始めましょう。


まとめ
日本の「寝たきり大国」問題は深刻であり、高齢者の寝たきり率が世界一となる状況が続いています。寝たきり問題は誰もが関わりを持つ重大な社会課題です。健康な未来のために、日々の生活で積極的な行動を起こしましょう。定期的な運動やバランスの取れた食事、健康診断の受診など、自己管理を徹底しましょう。また、家族や近隣の高齢者への支援やコミュニティ活動への参加も大切です。一人ひとりが健康意識を高め、寝たきり大国からの脱却に向けて行動することが必要です。

◎参考データ(参考までに、厚生労働省等の公開資料を集めてみました)
日本の寝たきり高齢者数:約400万人(2022年)
・世界の寝たきり高齢者数:約1200万人(2022年)
・日本の65歳以上の高齢者比率:29.1%(2022年)
・介護保険制度の予防サービス利用率:約20%
・介護保険制度の給付費:約12兆円(2022年)
・介護離職者数:約60万人(2022年)


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